電子帳簿保存法による建設業への影響と効果的な対応策
建設業界では、国土交通省によるi-Constructionの推進やデジタル化の波が急速に押し寄せています。
2024年1月1日から電子取引データ保存が完全義務化された「電子帳簿保存法」への対応は、すべての建設業者にとって避けて通れない課題となっています。
既に対応期限を過ぎているため、まだ完全対応できていない企業は税務上の重大なリスクを抱えている状況です。
株式会社デルタではDX化に役立つシステム開発や運営も行っております。
本記事では、中小建設業の経営者の皆様に向けて、電子帳簿保存法の最新動向と実務に即した対応策を解説します。
電子帳簿保存法とは?建設業への影響
電子帳簿保存法は、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と言い、帳簿や書類を電子データで保存するための要件を定めた法律です。
1998年に施行されましたが、2022年1月の改正で大きく変わりました。
最大の変更点は「電子取引データの保存が義務化」されたことです。
当初2022年から完全義務化の予定でしたが、準備期間の不足から2023年12月31日まで宥恕措置(猶予措置)が取られていました。
2024年1月1日からは猶予期間が終了し、すべての事業者において完全対応が求められています。
建設業においては、取引書類、工事写真、施工計画書など膨大な書類を扱うため、対応範囲が広く、業務プロセス全体に影響が及びます。
最新の税務調査では、電子帳簿保存法対応状況の確認が重点項目となっており、早急な対応が求められています。
建設業が直面する3つの課題
建設業における電子帳簿保存法対応は、業界特有の事情から特に難しい課題となっています。
現場作業が中心の業態ゆえに、デジタル化の波に乗り遅れている企業も少なくありません。
完全義務化後の現在、多くの建設業者が以下の3つの課題に直面しています。
1. 現場と事務所の二元管理の難しさ
建設業では、現場での書類作成・収集と事務所での経理処理が分離しているケースが一般的です。
現場監督が集めた納品書や作業日報が事務所に届くまでに時間がかかり、電子データとしての一元管理が難しいという課題があります。
現場でのデジタルデバイス活用は、防塵・防水性能や操作性の問題から浸透しきれていない企業も多いのが現状です。
2. 紙ベースの請求書・納品書・契約書の多さ
建設業界では、下請業者や資材メーカーとの取引において依然として紙の書類が残っています。
特に中小の協力会社からは手書きの納品書が届くことも珍しくありません。
インボイス制度の影響もあり電子化は進んでいますが、工事請負契約書など重要書類は従来の習慣から紙での取り交わしが求められるケースも多く、完全電子化への移行の障壁となっています。
3. システム導入・運用コストと人材不足の問題
中小建設業者にとって、専用システムの導入や維持にかかるコストは依然として大きな負担です。
2024年1月の完全義務化に間に合わせるため、一時的な対応にとどまっている企業も少なくありません。
また、ITに詳しい人材が不足している場合が多く、導入したシステムを十分に活用できていないケースや、社内教育が追いついていない状況も見受けられます。
電子帳簿保存法の3つの保存方法と建設業での適用
電子帳簿保存法では、電子データを保存する方法として主に3つの方式が規定されています。
建設業においては、これらすべての保存方法が業務の中で必要となるケースが大半です。それぞれの方法について、簡潔に解説します。
1. 電子取引データの保存(2024年1月から完全義務化)
電子メールに添付された見積書・請求書や、EDI(電子データ交換)で受領した発注書などが対象です。
建設業では、資材メーカーからの請求書PDFや、CADデータのやり取りなどが該当します。これらは改ざん防止措置を施した上で、検索可能な状態で保存する必要があります。
具体例: 鉄骨メーカーからメールで届いた請求書PDFは、タイムスタンプを付与するか、編集できないよう措置を講じた上で、工事名・取引先などで検索できるように整理して保存します。
クラウド型の電子取引保存システムを活用することで、受信したメールから自動で対象データを抽出・保存する方法が一般的になっています。
2. スキャナ保存
紙で受け取った書類を電子化して保存する方法です。
建設業では、手書きの作業日報や紙の納品書、工事写真などが対象となります。
要件緩和により以前より利用しやすくなっていますが、一定の解像度(200dpi以上)でスキャンし、改ざん防止措置を講じた上で保存する必要があります。
3. 電子帳簿等保存
会計ソフトや工事管理システムで作成・保存される原始データが対象です。
仕訳帳、総勘定元帳のほか、見積書や実行予算書なども含まれます。システム要件を満たした上で、7年間の保存が必要です。
電子帳簿保存法違反罰則と対応不足のリスク
電子帳簿保存法により、2024年1月1日から電子取引データ保存が完全義務化された現在では対応不足の場合、大きなリスクになります。
具体的には以下のようなリスクが生じます。
①青色申告の承認取消しリスク
2024年以降の税務調査では、電子取引データを適切に保存していない事例に対して、青色申告の承認取消しの警告事例が報告されています。
②経費否認リスク
税務調査において電子データの原本が提示できない場合、経費として認められないケースが増加しています。
建設業では多額の外注費や材料費が発生するため、これらが否認されれば多額の追徴課税につながります。
③受注機会損失リスク
電子帳簿保存法への対応状況は、取引先からの信頼性評価の重要項目となっています。
大手ゼネコンや官公庁では、入札資格や下請業者選定の際にデジタル対応力を評価項目に加えるケースが一般的となっています。
電子帳簿保存法への段階的対応計画
完全義務化から1年以上が経過した現在でも、建設業界では対応が追いついていない企業が少なくありません。
しかし、今からでも段階的に対応することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
中小建設業者が今から取り組むべき対応計画を以下に示します。
第1段階:現状の対応状況診断と緊急対応
まずは自社の現状を正確に把握します。電子取引データの保存状況、紙書類の電子化状況、電子帳簿の要件充足状況を確認します。
特に2024年1月から完全義務化された電子取引データの保存が不十分な場合は、過去のデータを可能な限り遡って保存する緊急対応が必要です。
第2段階:優先順位の高い書類の対応強化
電子取引データの保存体制を強化します。
既存のメールシステムでの対応に限界がある場合は、専用の電子取引保存システムの導入を検討します。
次に多い紙の納品書や領収書については、組織的な管理要件を満たすスキャナ保存への移行を進めます。
第3段階:業務フローの再設計とシステム選定
電子化を前提とした業務フローへの見直しを行います。
電子帳簿保存法対応だけでなく、インボイス制度対応や業務効率化を同時に実現するシステムの導入を検討します。
建設業向けの統合型システムも充実しており、工事管理から会計、電子取引保存まで一気通貫で対応できるソリューションを比較検討します。
第4段階:全社導入と継続的な改善
選定したシステムを本格導入し、電子帳簿保存法の完全対応を実現します。
特に現場監督や協力業者との窓口となる担当者への丁寧な教育が重要です。定期的に運用状況をチェックし、改善を続けましょう。
電子帳簿保存法対応システムのコスト対効果と支援制度
電子帳簿保存法対応システムを導入するとなると、費用コストがかかりますが、助成金が使える可能性もあります。
以下に、導入コスト、業務効率化と経費削減効果、支援金についてご紹介します。
導入コスト
電子帳簿保存法対応システムはより手軽になっています。
小規模事業者(5〜10名程度)であれば、クラウド型の文書管理システムで月額1〜2万円程度から導入可能です。
中規模事業者(30名程度)では、建設業向け統合型システムを導入する場合でも、初期費用30〜80万円、月額利用料3〜8万円程度となっています。
業務効率化と経費削減効果
電子化による効果として、書類検索時間の短縮(平均75%減)、保管スペースコストの削減(年間約12万円/坪)、経理処理時間の短縮(平均35%減)、現場-事務所間の情報共有時間の短縮(平均60%減)などが報告されています。
活用できる支援制度
2025年度も継続しているデジタル化支援事業では、中小企業のDX推進に向けたシステム導入費用の最大1/2が補助されます。
また、中小企業DX促進税制を活用すれば、デジタル関連投資に対する税額控除や特別償却が可能です。
まとめ:電子帳簿保存法への対応は必須
電子帳簿保存法への対応は、既に猶予期間が終了し完全義務化されています。
まだ十分に対応できていない企業は早急な対応が必要です。
特に重要なポイントは以下の3つです。
- 現状の緊急確認: 特に2024年1月以降の電子取引データが適切に保存されているか確認し、不十分な場合は早急に対応する。
- システムの最適化: 一時的な対応から、長期的に運用可能な本格的なシステム導入へと移行する。
- 人材育成と体制整備: システム導入だけでなく、社内の運用ルールの明確化と継続的な教育が重要。
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